【現場力】蒸留塔の炊き上げ不良【蒸留塔】

日本には様々な化学メーカーが存在するが、蒸留塔はほとんどの工場にあるのではないだろうか。今回は蒸留塔の運転においてよく問題になる、炊き上げ不良について紹介する。

炊き上げ不良とは

蒸留塔の詳細な設計については割愛するがリボイラー(再沸器)の加熱には飽和蒸気等が使用され、5k蒸気であればおよそ150℃、9k蒸気であれば170℃ほどの熱が与えられる。生成したい主成分の沸点・濃度に合わせて熱源・運転圧力が選択される。

蒸留塔での炊き上げ不良とは、蒸留塔下部のリボイラーで加熱しても低沸成分(沸点が低い、蒸発しやすい成分)が沸騰し塔上部に移動していかないことの事である。炊き上げ不良が発生すると、留出液が望み通り組成で得られないばかりか、蒸気量も少なくなるため還流すらかからなくなることがある。

そのため、通常には仕込み液が炊き上がらないということはあり得ない。

 

炊き上げ不良の検知手段

炊き上げ不良の検知手段としては、以下の5つが考えられる。複数の監視点を比較し、炊き上げ不良であるか判断する必要がある。

  1. 塔下部の液面上昇
  2. 塔上部の温度低下
  3. リボイラーへ仕込み蒸気圧力の上昇
  4. 蒸気流量の低下

塔下部の液面上昇は、リボイラーの炊き上げ不良により仕込み液が沸騰しないため、留出液と缶出液の合計流量が仕込み流量より小さくなるために発生する。この場合には、コントロールバルブの故障などによる仕込み流量の増加も考えられので注意する必要がある。

塔上部の温度低下は仕込み液の蒸気量が減少することで塔上部の熱量が低下することで発生する。こちらも仕込み液の減少でも起こりうる。

仕込み蒸気圧力の低下は、リボイラーにて蒸気が熱交換していないときに発生する。仕込み液から低沸分が蒸発しないと蒸気から潜熱を奪っていかないためである。炊き上げ不良とは言わば熱交換不良のため、仕込み蒸気圧力の低下は発生しやすいので注目すべき監視点である。

蒸気流量の低下は単純に熱源の減少し、沸騰に必要な熱を供給できていないためなので気づきやすい監視点である。

炊き上げ不良の原因

炊き上げ不良であると判断できた場合、その原因を調査する必要がある。検知手段で紹介した4つの事象が起こりうる原因として、様々な可能性があるが大きくは以下の6つが考えられる。

  1. 蒸気トラップの故障
  2. 高沸成分の濃縮
  3. リボイラーの能力低下
  4. 循環ポンプの故障
  5. 仕込み液流量の増加
  6. 蒸気流量の低下

蒸気トラップが故障することで吹きっ放しが発生し、蒸気流量は上昇するが蒸気圧力は低下し十分な熱量が供給されないことがある。蒸気トラップの故障については計器だけでは判断できないことがあるため、複数の計器と現場を確認して判断する必要がある。基本的には蒸気流量の増加、蒸気圧力の低下が同時に起こる場合が多い。

もう一点、現場計器だけで判断できないのが仕込み液中の高沸成分の増加である。仕込み液中の高沸成分が増加することで、通常の蒸気量・運転圧力では沸騰していかない為炊き上げ不良が発生する。この場合は、沸騰しない為熱交換しないことから蒸気圧力が上昇することが多い。高沸成分が増加した場合には、運転圧力を低下させ沸点を低下させることで無理くり運転することはできるが抽出組成がおかしくなるためおすすめではない。高沸分用の蒸留塔・設備があるのであれば、一旦抜き取り量を増やして高沸分を除去するのが好ましい。

熱交換が不足する原因としては、リボイラー内の接触面積の減少や内部漏れ、また高沸成分がリボイラーに循環されて行かない循環ポンプの故障が考えらる。この場合には仕込み蒸気流量などが正常であるにも関わらず、温度が低下していくことから判断できる。

仕込み液の増加、蒸気流量の増加に関しては計器での検知が可能な為割愛する。

今回は蒸留塔の炊き上げ不良について紹介した。蒸留塔の炊き上げ不良が発生した場合は、故障が考えられる箇所を修理し再度仕込みを安定させてから立ち上げるのが基本である。運転はオペレーターの方に任せよう。技術スタッフは問題の発見・早期解決に注力しよう。

以上、ご安全に

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