【基礎知識】Uシールの構造原理

現場でUの字が逆になったような配管を見たことがあると思う。わざわざ直管を引かずに、お金をかけてまでこのような配管を引くのか。今回はいわゆるUシール配管の構造・原理とUシール周りのトラブルについて紹介する。

Uシールの構造原理

Uシール配管はタンクからタンクの間を液で満たしガスの移動を防ぐ、または液をその高さまで貯めるために為に使用される。図のようにわざと配管をUの字、または逆Uの字に曲げることでその配管の中を液で満たすことが出来る。配管内を液封(液で満たす事)することでガスが配管中を移動することを抑制することが出来る。また逆Uの字にすると同圧になろうとする為、その配管の高さまで液をためることが出来る。

 

Uシールの効果

化学プラントにおける、Uシール配管の使用箇所は主に気液相が存在するような箇所で使用される。

下のプロセスのような蒸留塔においてもよく使用されている。右のUシールがないプロセスの場合、蒸留塔につながる還流の戻りラインが液満つにならない。そのため、蒸留塔で炊きあがった低沸分は圧力損失の高いチューブ側を通らず、ショートパスしコンデンサー下の凝縮タンクを通ってベントまで抜けてしまう。

この場合、熱交換を十分にされず還流とならないため蒸留塔の組成・運転バランスが大きく変動してしまう。また低沸ガスと還流が同一のラインを流れるため、還流が脈動してしまい更に運転バランスに影響を及ぼす。液とガスの通り道を分離する上でUシールは非常に重要な役割を果たしている。

 

更に蒸留塔の一部のコンデンサーに着目してみる。今回は冷却したいガスがシェル側を通る場合を考える。チューブ側に冷却水が流れており、チューブに接するガスが多いほど冷却が効果的なのがわかる。

下の絵は極端な設計だが、右のUシールがない場合はコンデンサ下部のチューブがないエリアにもガスが滞留し、熱交換能力が落ちてしまう。しかし左のUシールを設置した場合は、チューブの付近まで液を張ることで、ガスとチューブが十分に熱交換を行うことが出来る

また液とガスが接触することで冷却が進む効果もある。下の絵はあくまで説明のため、極端な設計をしているが、通常のコンデンサにおいても下部に少しだけ液を張ることは熱交換能力を向上させる有用な方法である。

 

Uシール配管で気を付けること

Uシール配管のメリットを紹介したが、技術スタッフとして気を付ける事例として自己サイフォン現象を紹介する。

サイフォン現象とは管内が液で満たされた場合に高い位置(この場合、Uシールの頂点)まで液を本来は上昇させる必要があるが、一旦液が抜け出すと鎖のように液をくみ上げることなく流れ続ける現象の事である。身近な例でいえば灯油ポンプは、灯油ポンプのチューブ内を灯油で満たし、ポリタンクを暖房器具より高い位置に置けば勝手に流れ続けてくる。

自己サイフォン現象は蒸留塔内の圧力が下がった際などに、還流戻り配管内の液が急激に抜けるとUシール内の還流も引きずられて流れてしまうことである。こうなった場合、還流が唐突に大量にかかるため蒸留塔の運転が大きく変動してしまう。またUシール配管内の液がなくなるため、再度液が溜まるまで還流がかからない。

この自己サイフォン現象を防ぐためには、還流流量を成り行きに任せるのではなくポンプとコントロールバルブで一定に調整するのが一番だが、そういった改造が出来ない場合はオリフィスを入れるなどでして圧力損失を作ることで、自己サイフォン現象が発生してもすべての液が抜けないようにするのが良い。

またUシールを設置すると、エルボが増えるため固着物などが含まれる液体の場合は閉塞しやすくなるため、液体を考慮して保温・保冷を行う事も重要である。

 

今回は、Uシールの構造原理と効果について紹介した。非常に有用な設備のため、なぜその箇所に設置されているのかを考えるとプロセスへの理解が深まる。

以上、ご安全に

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