【水素社会の実現?】SPERA水素システムとは【次世代エネルギー】

今回は遂に実用化段階に入った千代田化工建設のSPERA水素について紹介する。というのも、学生時代の友人が入社しているし、水素銘柄だから安泰だろうと安易な考えでポートフォリオの一部に組み込んでいた銘柄が大きく動いたので気になって調べたら、どうもSPERA水素の実用化の目途がたった事とカタールの新工場建設のニュースの影響が大きいらしい。

カタールの新工場はLNG工場のため、今回は聞きなれないSPERA水素について紹介する。

水素の輸送・貯蔵について

水素は単位重量当たりのエネルギーは大きく(水素:33,940kcal/kg、天然ガス:13,280kcal/kg)、自動車やロケットに積載する分には良いが、単位体積当たりのエネルギーが低い(水素:2.95kcal/l、天然ガス:9.59kcal/l、液化水素2,410kcal/l、液化天然ガス:5,640kcal/l)為、いかに高密度で輸送・貯蔵することが課題である。

水素の輸送方法には大きく4つの方法がある。

  • 高圧ガス
  • 液化水素
  • パイプライン
  • 有機ハイドライド

 

高圧水素の輸送にかかわるコストとエネルギー効率 圏分裕一

高圧ガスによる輸送はもっとも普及している手段である。圧力によってさまざまではあるが常圧ガスの状態に比べておよそ200分の1から400分の1まで圧縮することが出来る。普及した成熟した技術であることから、水素供給コストは1869円/Nm3と2009年の論文時点ではコスト面でも優れている。

液化水素による輸送は水素をー235℃まで冷却することで常圧ガスの約800分の1まで圧縮することが可能である。しかし液化に超高圧・超低温にするためのエネルギー・大規模設備が必要であり高コストである。近年は高圧ガスよりも単位体積当たりのエネルギー効率の高さに注目され工業用の水素供給に占める割合が上昇している。

パイプラインによる輸送はコンビナートや化学工場の間での輸送での実例はあるものの、大規模な初期投資が必要であること、維持管理、安全面等で導入は検討段階である。

有機ハイドライドによる輸送は1980年より技術としては確立していたが、実用的な触媒の開発が遅れたため実用には至っていなかった。2015年からNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)、三菱商事、三井物産、日本郵船、千代田化工建設の5社による技術研究組合「AHEAD」による本格的な研究が行われ、2020年12月にインフラ全体の実証実験に至るまで開発が進んだ。

有機ハイドライドのメカニズム

 

千代田化工建設HP

有機ハイドライドのメカニズムはトルエンと水素を触媒下、250℃で反応させることでメチルシクロヘキサンにしてしまうといういたってシンプルな反応構造である。このメチルシクロヘキサンを「SPERA水素」と呼称している。

このメチルシクロヘキサンを再度触媒下で350℃で反応させることで、トルエンと水素に分離しプラントで使用するのである。

途中式が開示されていない為、一次反応で進むと思うがトルエンと水素を結合させてメチルシクロヘキサンにするのに40年かかったと考えると反応速度的にかなり難しい課題があったと思われる。

SPERA水素のメリットと課題

SPERA水素のメリットは以下の3つに集約される。

  1. 熱収支が優れている
  2. 常温常圧で輸送・貯蔵することが出来る
  3. 圧縮率が高圧ガスより優れている

上記の反応式の反応熱を見てもらうとわかるが、水素を付与する時と取り出すときの熱量が同一である。付与する場所と取り出す場所が異なるため、局所的には異なるがマクロな視点で見ると熱収支がゼロになっている。反応させる運転条件が不明のため、断言できないが化学反応的にはエネルギーを使用せず水素を貯蔵することが出来る。これは高圧ガス化、液体水素化と比べ大きなメリットである。

2つ目はメチルシクロヘキサンが常温常圧で輸送・貯蔵できることである。高圧水素、液化水素は高圧に耐えうるようなタンクで輸送をする必要がある。高圧ガス製造設備は法律も面倒だし、保全が必要である。長距離輸送を行う際に、圧力温度を管理しなくてよいのは運転上とてつもないメリットである。特にトルエン、メチルシクロヘキサンはガソリンと同じ取り扱いで問題ないため、石油輸送設備・インフラが代用可能である点も非常に大きい。

3つ目は圧縮率が高圧ガスよりも高い点である。液化水素には劣るが、常温常圧で管理できるにも拘らず、常圧ガスの500分の1まで圧縮できるのは破格である。

 

水素の貯蔵・輸送技術が進展、実用化に残る課題はコストダウン

このSPERA水素の今後の課題は調べる限り以下の2点であると思われる。

  1. 水素の純度が低い 水素自動車用の水素純度は99.97%が必要であるISO14687-2
  2. 建設・輸送の初期コストが必要である

現在、SPERA水素で得られる水素の純度は98~99%である。水素を取り除く工程でトルエン、メチルシクロヘキサンが残留するためである。水素自動車用の水素純度はISO14687-2規格において99.97%が必要であり、SPERA水素は未達である。現在は工場の燃料としての使用が主用途のため問題ないが、今後水素自動車など水素社会実現のためにはさらなる高純度化が必要と思われる。

また、メチルシクロヘキサンから水素を取り出すためには、簡単な反応ではあるが設備が必要である。こちらも水素自動車、水素社会実現のためにはガソリンスタンドの様に建設が必要である。

今回は管理人の興味で千代田化工建設のSPERA水素について紹介した。めっちゃ面白い技術なんで今後もどのように実用化されるか期待して、情報を追っていきたい。

以上、ご安全に

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